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抗がん剤の補助療法とは何か |
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現在でも,がん治療は手術が中心ですが,手術だけでは,がん細胞を完全に取り除くことが困難なケースもあります。
たとえば,がんの腫瘍を切除したとしても,目に見えないがん細胞はその先のリンパ節や他の臓器にすでに転移している可能性があります。
そこで,手術後に抗がん剤投与をおこなうことで,目に見えないがん細胞を殺傷し,術後の再発を予防する治療法があります。これを術後化学療法(アジュバント療法)といいます。
一方,腫瘍が大きすぎたり,切除が困難な部位に腫瘍が発見されたりする場合もあり,そのままでは,手術不能となってしまいます。
このようなケースでは,手術前の抗がん剤投与で,腫瘍を縮小させることができ,手術が不能な患者でも,腫瘍の切除ができるようになります。
また,腫瘍の縮小により,切除範囲を小さくし,患者の負担を軽くすることもできます。これを術前化学療法(ネオアジュバント療法)といいます。
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術後化学療法(アジュバント療法)の実際 |
現在,術後化学療法が広くおこなわれ,成果も上がっているがん種が,乳がんです。
わきの下のリンパ節に転移している乳がんに対しては,原発巣を含めてリンパ節まですべて切除したとしても高い確率で再発が起こることがわかっています。
たとえば,転移のあるリンパ節が4個以上なら,再発率は50%以上と予想されます。
そこで,手術後にリンパ節転移を認めた患者には,再発抑制のために,手術後に,抗がん剤投与が行われています。
治療法としてははCMF療法CAF療法,あるいはパクリタキセルなどのタキサン系薬剤を使ったACT療法などが行われます。
このような術後化学療法により,乳がんの再発率を20〜30%小さくすることができるといわれています。
一方,切除可能な膵臓がんに対しては,手術後に化学療法を一定期間行うことが標準治療となっています。
現在,膵臓がんの手術では,治療を受けた8割近くの人が再発しています。そこで補助化学療法では,残されたがんがまだ小さい時期に化学療法を行い,再発を防いだり,再発までの期間を延ばしたりする効果が期待されています。
この治療でゲムシタビン(ジェムザール)は補助療法としての効果が確認されています。最近では,術後にTS−1を用いるとゲムシタビンよりもすぐれた効果があるという報告もあります。
この他にも,精巣がんや卵巣がんなどで,手術後に化学療法を行うことが一般的になっており,最近では,非小細胞肺がんや大腸がんに対してもその有効性が確認されています。
ただし,術後補助化学療法がすべてのがんに対して有効ということでなく,食道がん,肝臓がん,頭頚部がんなどについては,未だ有効性は示されていません。
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術前化学療法(ネオアジュバント療法)の実際 |
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手術前に抗がん剤投与をおこなって,手術をおこないやすくするというこの治療法は比較的新しい治療です。
近年,乳がんに対して術前化学療法がさかんに行われるようになっています。これは手術前に化学療法によってがんを縮小させることにより,乳房温存手術が可能になるためです。
患者が乳房温存を希望してはいても,そのままだと腫瘍が大きすぎて温存が難しい場合には,術前化学療法を行ってがんを縮小させ,縮小手術によって温存ができるようになってきています。
かつては骨肉腫は,周囲に広がりやすく,手足の切断が普通でした。
しかし,最近では,手術前に化学療法を行うこで,がんが縮小して,手足を温存することが可能になっています。ただし,骨肉腫では手術後にも化学療法を行っています。
さらに,最近まで手術や放射線治療が中心であった頭頚部のがんにも,手術前に化学療法を行うケースが増加しています。
頭部や頸部には重要な神経のほか呼吸,発声,咀嚼,呼吸などのための重要な器官が集中しています。
そのため,頭頚部の切除範囲が広いと,患者は治療後に障害を持つことになり,大幅なQOLの低下はまぬがれません。そこで,手術前の化学療法が広く行われるようになりました。
このように術前化学療法は,患者の治療後のQOLを高める治療法であり,新しい薬剤の開発と共に,今後も他の部位でも普及していくと考えられます。
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