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肺は胸郭の中に入っていますが,胸郭の内側は壁側胸膜,肺の外側は臓側胸膜という胸膜でおおわれています。
この壁側胸膜,臓側胸膜で囲まれた部分を胸腔と呼びます。
正常な場合は,この胸腔には少量の胸水が存在し,呼吸時に2つの胸膜が滑らかに滑って十分に肺が伸び縮みするような潤滑剤としてとしての役割をはたしています。
がん細胞がこの胸腔に広がるとがん性胸膜炎となり,胸水が異常に増加します。
この胸水の原因はまだはっきりとわからないこともあるのですが,がん性胸膜炎の影響により,血漿成分が滲出してしまったり,.肺がんの肺門リンパ節転移によるリンパ管閉塞により,体液が漏出してしまうことなどが原因として考えられています。
また,がんによって,新たにつくられた新生血管は,血管膜が薄く,血漿成分が滲みだしてしまうことも原因となっています。
胸水の原因となるがんは肺がんが一番多く,乳がん,胃がんなどでも起こります。
胸水の量が多いと肺を圧迫して呼吸困難引き起こし,これが死亡原因となることもあります。
このがん性胸膜炎を起こしてしまうと,治療によるがんの治癒は困難です。
がん性胸膜炎の治療には,全身療法と局所療法があります。がんの全身療法は抗がん剤の全身投与によるもので,これが有効であれば胸水の貯留は減少します。
がん性胸膜炎の発症から6ヵ月が平均生存期間ですが,抗がん剤が有効な場合,さらに延命できます。
一方,胸腔には,全身投与とは比較にならない高濃度の抗がん剤治療が可能ですので,この部分に関しては全身投与よりはるかに効果があります。
また,がん性胸膜炎による胸水の貯留が呼吸困難を起こし,直接の死因となることもありますので,胸腔に胸水が溜まらないように癒着をおこし,物理的に胸水が溜まる空間がなくなるようにする治療法もあり,この状態はかなり避けることができます。
一般的には,胸腔に管を挿入し,十分に胸水を吸引して肺を膨張させた後,その管から胸膜を癒着させる薬剤を注入します。この場合,一時的に胸痛や発熱を伴います。
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