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ドキソルビシン・抗がん剤の概要
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分類- 抗がん性抗生物質 |
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抗がん剤ドキソルビシンは, 1967年にイタリアのファルミタリア研究所で発見されたアントラサイクリン系の抗腫瘍性抗生物質です。
研究所がアドリア海に近いこともあったことからアドリアマイシンと命名されました。
腫瘍細胞のDNAの塩基対に入り込み, DNAポリメラーゼ, RNAポリメラーゼ,トポイソメラーゼⅡの反応を阻害し, DNAとRNAの合成を抑制することによって抗腫瘍効果を示します。
細胞周期別では特にS期に高い感受性を示します。
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治療対象となるがんの種類
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乳がんには,AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)を使用します。
ただし,乳がんの術後,再発や転移を防ぐために,術後化学療法でアントラサイクリン系薬剤を多用した場合は,アントラサイクリン系からタキサン系薬剤を含む併用療法に変わりつつあります。
悪性リンパ腫では, ABVD療法(ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)がホジキンリンパ種の標準的抗がん剤治療法として,
CHOP療法(シクロフォスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+ダカルバジン)と,R(リツキマシブ)-CHOP療法,非ホジキンリンパ腫の標準治療法となっています。
悪性リンパ腫,肺がん,胃がん,胆嚢・胆管がん,膵臓がん,肝臓がん。大腸がん
乳がん,膀胱がん,骨肉腫,子宮体がん,多発性骨髄腫,小児がん,尿路上皮がんなどに使用されます。
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投与法
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粉末か,かたまり状の注射剤で,投与方法は静脈注射か,点滴,膀胱内注入があります。
多剤との併用が多く,用量や投与スケジュールはがんの種類や患者の状態によって異なります。
通常,ドキソルビシンの生涯蓄積量は500mg/㎡以下とされています。
シクロホスファミドの併用投与,心臓や肺の放射線照射がある場合は,450mg/㎡までが副作用のリスクから生涯蓄積量の限界とされています。
持続投与では,中心静脈カテーテルを使用し,薬剤のもれを防ぐ必要があります。
乳がんのAC療法では,ドキソルビシン60mg/㎡(day1,静注)+シクロホスファミド600mg/㎡(day1,静注)を21日1コースとして4コース投与します。
悪性リンパ腫のABVD療法では,ドキソルビシン+プレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジンをday1 ・ 15に投与します。
また,ABVD療法はホジキンリンパ腫の標準治療法です。
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)のCHOP療法ではシクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+プレドニソロンを投与します。
また,悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)R-CHOP療法では上記の抗がん剤にリツキシマブを加えます。
このR-CHOP療法は CD20陽性非ホジキンリンパ腫の標準治療法です。
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ドキソルビシンの主な副作用
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アントラサイクリン系の薬剤なので,心機能障害が起こりやすく,総投与量が増加するにつれ, 発生頻度も高く,症状も重くなります。
狭心症,不整脈,心筋梗塞などが,引き起こされる場合,投与を中止する必要があります。
口内炎は投与量が増えるにつれ増加します。適切な口腔内ケアを実践する必要
があります.
脱毛は投与2~5週後に始まり,抗がん剤治療終了後に回復がみられます。
また,ドキソルビシン投与前に放射線治療を行っていれば,皮膚炎症などが起こりやすく,注意が必要です.
悪心・嘔吐は投与された患者の約50%に生じるため,制吐薬の適切な使用が必要です。
骨髄抑制があらわれやすく,骨髄抑制にともなう,出血,発熱,悪寒,感染症には注意が必要です。
その他の副作用として,出血,心電図異常,頻脈,食欲不振,口内炎,下痢,脱毛,発熱などがみられます。
また膀胱がんでの適応として膀注がありますが,実施した場合は,頻尿,排尿痛,膀胱炎,血尿などが副作用として報告されています
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使用上の注意 |
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アントラサイクリン系薬剤であるので,心機能低下をもたらす可能性が高く,総投与量が500mg/㎡以上において,心機能低下がもたらされるため,投与量について確認しておく必要があります。
心臓の機能に異常があったり,その既往歴のある人は使用できません。
抗がん剤治療中に薬液が血管外にもれると皮膚に炎症や潰瘍がおきることもありますので,点滴中はでぎるだけ体を動かさないよう注意してください。
胸部への放射線照射と併用すると,心筋障害などの副作用が強く出る可能性があります。
薬剤とその代謝物による赤色尿がみられることもありますが,特に問題はありません。
点滴時に同部位で穿刺を繰り返すこ とで,薬剤性の化学的静脈炎や静脈硬化が生じる場合があるので,できるだけ穿刺部位を変えることが必要です。
動物実験で胎児への毒性が報告されており,妊娠中または妊娠の可能性がある人は医師に相談し,また,授乳は控えてください。
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