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脳腫瘍の治療
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悪性の脳腫瘍にはいくつかの種類がありますが,成人に多い悪性脳腫瘍は,グリア細胞(神経膠細胞)が癌化する神経膠腫(グリオーマ)です。
グリア細胞は脳の神経細胞(ニューロン)に栄養分を補給したり,周囲の不要物を吸収するなどの役目をもっています。
ほとんどの神経膠腫は抗がん剤が効きにくいとされています。これに対し,子どもの悪性脳腫瘍に対しては,多くの場合,高い効果を示します。
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脳腫瘍の外科手術
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脳に発生する腫瘍には良性と悪性があります。
脳の腫瘍は放置しておくと良性でも生命の危険がありますが,腫瘍を切除すれば確実に治癒します。
これに対して悪性の脳腫瘍は,周囲にしみ出すように広がるため,完全に取り除くには,脳を大きく切開する必要があります。
脳を大きく切除することは,言語障害や運動機能障害だけでなく,さらには精神の異常をきたすおそれがあり,患者にとって大きな後遺症が残ってしまいます。
したがって,脳腫瘍の手術では,切除範囲を最小限に抑える必要があり,手術後の放射線治療や抗がん剤治療は重要な役割を果たしています。
良性の脳腫瘍に対しては,手術のみで治療されますが, このように,悪性の脳腫瘍に対しては外科手術の他に放射線療法や抗がん剤治療が併用されます。
また,抗がん剤の投与は,手術で取り残したり,再発した場合の補助療法が中心です。
現在,脳手術の技術も進歩し,手術用の顕微鏡下で,腫瘍部の位置確認を3次元で把握できるナビゲーションシステムを導入している病院も増えています。
さらに精密なメスの動きを可能にした,ニューロナビゲーターと呼ばれるロボットハンドにより,より正確で,安全に手術ができるようになってきています。
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脳腫瘍の放射線療法
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放射線療法は術後,取りきれなかった腫瘍への治療だけでなく,脳腫瘍のなかでも特に転移性脳腫瘍に単独でも効果を上げています。
転移性脳腫瘍は原発性脳腫瘍より,腫瘍の境界線がはっきりしており,正確に照射でき,放射線療法には適しています。
ガンマナイフは,1968年に開発された脳腫瘍専門の治療機器で,手術では困難な深部の治療ができます。入院期間も2泊3日程度と手術よりもはるかに短い日数ですみます。
最近では,ガンマナイフより自由度が高い,サイバーナイフが登場しました。
このサイバーナイフは超小型リニアックをロボットアームに取り付け,様々な角度から腫瘍に放射線を照射できます。
また,ガンマナイフのように,頭部を金属で固定する必要がなく,ガンマナイフより分割照射ができるので,3cm以上の腫瘍にも対応できます。
近年では,陽子や炭素の原子核を加速し,がんに集中して照射する陽子線治療や炭素の原子核を使う治重粒子線治療が開発されました。
これら粒子線治療では粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,がん病巣内部で粒子が最大のエネルギーを放出するよう設計されています。
粒子線治療は,現在,悪性の脳腫瘍などもっとも治療が困難とされているがんに臨床試験として用いられています。
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脳腫瘍の抗がん剤治療
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脳腫瘍の抗がん剤は限られる
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脳腫瘍に対しての抗がん剤治療では,一般的に手術で取り残した腫瘍や再発した腫瘍に使用されます。
脳の血管には糖など,ごく一部の物質しか通さない血液悩関門があり,抗がん剤治療では,脳腫瘍に使用される薬剤は限られます。
さらに,脳腫瘍には,抗がん剤の効きやすい種類と効きにくい種類があります。
脳腫瘍におもに使用されるのは,薬剤の分子量が小さく脳血液関門を通り抜けられる二トロソウレア系のニムスチン,ラニムスチンなどです。
たとえば,脳腫瘍に使用される抗が剤の組み合わせとして,プロカルバジン+ニムスチン(ニドラン)+ビンクリスチン(オンコビン)という3剤併用(PAV療法)があります。
ニムスチンとビンクリスチンは点滴ですが,カプセルのプロカルバジンは1日2回経口で服用します。これを2週間続け,6〜8週間の間隔をおいてくり返します。
このPAV療法は,抗がん剤の効きやすい乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)や小児脳腫瘍にたいして使用されます。また,この治療にインターフェロンβを追加する,PAV‐フェロン療法もあります。
副作用として吐き気,嘔吐,食欲不振,口内炎,便秘,めまい,倦怠感などがあります。
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脳腫瘍のアルキル化抗がん剤テモゾロミドが登場
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これまで脳腫蕩には,抗がん剤が効きにくいとされてきましたが,テモゾロミド(テモダール)が19年ぶりに脳腫瘍の新薬として登場し,グリオーマにたいする手術や放射線の補助療法として有効な抗がん剤として選択されるようになりました。
テモゾロミドはアルキル化剤の一種であり,放射線と併用することで放射線単独を上回る効果が確認されています
テモゾロミドにはカプセルと点滴薬があり,カプセルの場合,維持療法は通院治療になります。
病気が初発の場合,放射線療法を併用し,1日1回の服用を6週間続け,4週間休薬します。
そのあと維持療法として,倍量を1日1回5日回服用して,23日間休薬するスケジュールを1コースとしています。また,再発した脳腫瘍にたいしても,同様な治療となります。
この抗がん剤の副作用としては,骨髄抑制,便秘,囗内炎がありますが比較的穏やかだとされています。
また,放射線と併用するときには別の副作用もみられ,悪心,嘔吐,脱毛,疲労感があります。
テモゾロミドの点滴薬は嚥下困難な高齢者などに使用され,通常はカプセルが投与されます。
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脳腫瘍の分子標的薬の抗がん剤ベバシズマブやラパチニブが登場
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神経膠腫などの悪性度の高い脳腫瘍などの悪性度の高い脳腫瘍の治療は難しく,化学放射線療法によって多少の延命が可能に程度でした。
特に,膠芽腫の治療は困難とされ,5年以上生存する患者は5%前後とされています。
現在,この膠芽腫に対する分子標的薬による抗がん剤治療もおこなわれるようになり,期待されています。
最近では分子標的薬のベバシズマブ(アバスチン)の使用も試みられており,欧米の臨床試験では,再発した膠芽腫の85人の患者のうち,6か月間に腫瘍の増大を認めなかった割合が36%だったと報告されています。
これまでの化学療法では,15%程度だといわれていたので,これから期待できる薬剤です。
さらに,2012年,米国では,グリオーマに分子標的薬のラパチニブ(タイケルブ)の高用量間欠療法が有効性が発表されました。
これは7日間を1サイクルとし,1日めと2日めにラパチニブを,1日にに2回投与する方法であり,今後,臨床試験がおこなわれる予定です。
また,脳腫瘍に対する免疫細胞療法などの免疫療法の研究もおこなわれるようになりました。
脳腫瘍に対しては樹状細胞ワクチン療法が効果があることが,国内外のがん治療研究で報告されています。
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