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抗がん剤の多剤併用法とは |
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ある種のがんに対して効果がある薬剤は,1種類だけでなく,複数ある場合がほとんどです。
そこで,より高い治療効果を得るために,複数の薬剤を組み合わせて投与することがあり,これを多剤併用療法といいます。
治療薬は種類によって,がん細胞を死滅させるメカニズムが異なります。そこで,複数の異なった薬剤を併用することで,相乗的な治療効果が期待できます。
さらには,併用療法による治療効果の向上により,それぞれの薬剤の投与量を抑えることもでき,その結果,副作用も軽減できるというメリットもあります。
現在では,この多剤併用療法が一般的で,根治を目指す場合,ほとんどこの方法で投与されます。
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たとえば,肺がんでは,進行非小細胞肺がんに,イリノテカン,パクリタキセル,ドセタキセル,ビノレルビン,ゲムシタビン,アムルビシン等の抗がん剤とプラチナ製剤による併用療法が行われています。
消化器がんでは、5−FUとロイコボリンとオキサリプラチン,イリノテカンと5−FUとロイコボリン,葉酸と5−FUとイリノテカン,イリノテカンと葉酸と5−FU,オキサリプラチンとイリノテカンとの組み合わせ等による多剤の併用療法が行われています。
また,乳がんに対する有効な治療法として,AC療法(ドキソルビシンとシクロホスファミドの併用)およびパクリタキセル(タキソール)(T)単独療法があります。
この治療法は,まずAC療法を4クール行い,引き続いてパクリタキセル単独療法を4クール行うという方法で,これは「AC+PTX(パクリタキセル)療法」と呼ばれています。
悪性リンパ腫の一種であるホジキンリンパ腫では,ドキソルビシン(アドリアマイシン)(A),ブレオマイシン(B),ビンブラスチン(V)そして,ダカルバジン(D)という,それぞれ作用するしくみや副作用の異なる4種類の薬剤を併用して投与する治療法がおこなわれており,「ABVD療法」と呼ばれています。
非ホジキンリンパ腫では,シクロホスファミド(C),ドキソルビシン(ハイドロキシダウノマイシン)(H),ビンクリスチン(O),それにプレドニソロン(P)を組み合わせた「CHOP療法」と呼ばれる多剤併用法が標準的治療となっています。
この治療法によって,進行がんも含めた悪性リンパ腫の約50パーセントの治癒が期待できると報告されています。
また,急性骨髄性白血病では,骨髄をほぼ正常な状態に近づける寛解導入療法で,イダルビシンまたはダウノルビシンにシタラビンの併用療法が標準治療となり,大きな治療効果を示しています。
近年では,従来の細胞障害性型抗がん剤とは,全く異なったはたらきで効果をあげる分子標的治療薬の登場により,さらに,その組み合わせる種類,数が増加しています。
このように,多剤併用療法では,単独ではなしえない,高い治療効果を生んでいます。
ただし,注意しなければならないは,多剤剤併用療法の場合,それぞれの薬剤が持つ有用な効果だけが相乗的に増幅するとは限らず,毒性や副作用等が増大する可能性も十分考えられるということです。
個々の薬剤が持つ有効性や安全性から,併用による効果や安全性を事前に予測する事は困難なため,臨床試験に基づいた安全性,有効性に裏付けられた抗がん剤の投与が望まれるところです。
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