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抗がん剤治療では,ほとんどの場合,多かれ少なかれ副作用がみられます。
副作用が強いのは,薬剤が効いている証拠と考えるのも,ある面わからなくもありませんが,「副作用が強いほど効果が高い。」とか,「副作用が少ないと効果があまり得られていない」などという因果関係は全くありません。
一般的に,薬物の副作用や効果は,血液中の薬物濃度に依存して現れるものですが,効果に関しては,そのがんの薬物感受性に依存し,副作用に関しては薬物代謝が関与し,それぞれ別々の原因により,あらわれるものです。
たとえば,薬剤の血中濃度を上げても,そのがんの薬剤に対する反応が低ければ,効果は上がらないということになります。
一方,薬剤に対する反応が高ければ,薬剤の血中濃度が低くても,効果は高くなるということにもなります。
また,この副作用の強弱に関しては,薬剤をどれだけ分解して代謝させることができるのかという分解酵素の能力の違いが大きく影響しています。
同じ量のアルコールを飲んでも,平気でいる人もいれば,ある人は真っ赤にになり気分を害する人もいます。
これはアルコールや,その分解過程にできるアセトアルデヒトの分解酵素の能力の差によるものです。
これと同じことが,抗がん剤治療においてもみられ,薬剤を代謝する能力の個人差は5倍から50倍もあるといわれています。
それでは,薬剤の代謝能力が弱く,副作用が強く出て,ダメージを受けている人の方が,全く出ない人より効果があるのかといえば,それは全く関係ないといえるのです。
さらに,がん細胞は,長く治療を続けていると,薬剤耐性を獲得し,その抗がん剤に対して耐性を持つ,すなわち効きにくくなる性質があります。
こうなると,いくら治療を続けていても,副作用のみあらわれ,治療効果は全くあらわれないという結果になってしまうのです。
以上のことから,副作用と治療効果は別に考える必要があるといえますし,副作用が強くでても,これは薬剤が効いている証拠だと考え,我慢してしまうのはよくありません。
副作用がでたなら,すぐに医師や看護師に状況を伝え,早めに対処することが大切です。
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