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腎臓がん(腎がん)とは
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腎臓はそら豆のような形をした臓器であり,横隔膜の下に左右1対あります。
腎臓は,血液を濾過し,体に不要な老廃物や,水分を尿として体の外に排出するというはたらきがあります。
腎臓に発生する腎がんは発生する場所によって,腎細胞がんと腎盂がんに分けられますが,大人が発症する悪性腎臓腫瘍のほとんどは腎細胞がんです。
通常,腎臓がんという時は,この腎細胞がんのことで,尿をつくっている腎実質にできる悪性腫瘍のことをいいます。
日本における腎がんの発生件数は年間1万人〜1万2千人程度で,約4千人が死亡しています。罹患者数は年々増加し,発症する年齢は40才〜60才代が多く,男性に多く発症するという傾向がみられます。 5年生存率は50〜60%程度です。
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胆のうと周辺臓器の構造 |
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腎臓がんの病期と治療法 |
病期 |
進行度 |
標準治療 |
T期 |
腫瘍の最大径が7cm以下で,腎臓内に限局している
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外科手術 |
U期 |
腫瘍の最大径が7cmより大きいが,腎臓内に限局し
ている
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外科手術 |
V期 |
腫瘍が以下の場所に認められる
・腎臓と隣接した1ヵ所のリンパ節
・副腎または腎周囲組織中に浸潤している
・腎静脈や下大静脈内に進展している
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外科手術 |
W期 |
腫瘍が以下の場所まで広がっている
・腎周囲脂肪組織層を越えて,腸腰筋,肝臓,膵臓,腸管などの他臓器まで
・腎臓と隣接した2個以上のリンパ節
・肺や肝臓,骨などの遠隔臓器 |
外科手術+術後薬物療法
または抗がん剤治療
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腎臓がんの治療
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腎臓がんの外科手術
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腎臓がんの治療の中心は外科手術であり,腎臓は通常どちらか一方があれば,もう一つの腎臓が2つ分のはたらきをするので特に問題はないとされ,原則として手術は片側腎臓摘出手術となります。
腫瘍が大きい場合,腎周囲脂肪組織や周囲のリンパ節,副腎をまとめて摘除する根治的腎摘除術を行ないます。
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腎動脈塞栓術
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腎臓がんの治療の中心は外科手術ですが,患者の体力が手術に耐えられない場合など,腎摘出術が不能な場合に実施されます。
足のつけ根の内側にある大腿動脈からカテーテルを挿入し,その先を腎動脈まで進めて塞栓物質を注入し,腎動脈をふさぎ,腫瘍への血流を遮断することで,がんを死滅させます。塞栓術と同時に抗がん剤を動脈内に注入するケースもあります
この治療により,一時的に腫瘍は縮小しても腎動脈以外の血管から腫瘍に栄養が供給されるようになるため,再び腫瘍は増大します。
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サイトカイン療法
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サイトカインとは,細胞から放出され,細胞間の情報伝達をおこなうタンパク分子です。
このサイトカインには多くの種類があり,サイトカインを受け止めた細胞は,増殖,分化,活性化,細胞自死など,様々な反応を起こすことが知られています。
腎臓がんば,がんの中でも,免疫力に影響を受けやすいがんといわれ,このサイトカインによる免疫療法がおこなわれています。
サイトカイン療法とは,サイトカインの機能を利用して,免疫細胞を活性化,増殖させることにより,免疫反応を高めようとするがんの免疫療法です。
サイトカインは100種類以上存在することが知られていますが,免疫療法に利用されているのは数種類です。
腎臓がんに対して治療効果のあるサイトカインは,インターフェロンα(IFNα),インターロイキンー2(IL−2)の2種類です。
IFNαまたは,IL−2を単独で使用した場合,一般的には13〜18%の患者に50%以上の腫瘍縮小効果があるといわれており,IFNαとIL−2を併用した場合,治療効果は単独療と同等からやや上回る程度と報告されています。
また,腫瘍の縮小効果を認めない場合でも,腫瘍が増大しないというケースも多く,このようなケースも含めると約半数の患者に効果があるという報告もあります。
ただし,サイトカイン療法の副作用は少なくはなく,サイトカイン療法の多くは,発熱や悪寒など,風邪様症状をともないます。
IL−2では,副作用としては,発熱や悪寒などの風邪様症状の他,頭痛,発疹,吐き気・嘔吐,食欲不振,下痢,体重増加,睡眠障害,顔や手足など全身のむくみの他,骨髄抑制,臓器の機能低下や低血圧などが起こることもあります。
IFNαでは,頭痛,倦怠感など風邪に似た症状が現れます。その他,骨髄抑制,貧血やめまい,食欲不振,脱毛,下血などの副作用もみられます。
また,まれにではありますが,間質性肺炎などの呼吸器の障害やうつ状態を引き起こすこともあり,注意が必要です。
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腎臓がんの抗がん剤治療
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腎臓がんは,抗がん剤が効きにくいとされ,これまではインターフェロンやインターロイキン2によるサイトカイン免疫療法が中心でした。
これは患者の免疫力を高め,がんを縮小させようとする免疫療法であり,まれに,よく効くことがあるものの,奏効率は10〜20%と,治療成績はよくありませんでした。
しかし,近年,分子標的治療薬が次々と登場し,抗がん剤治療による生存期間が以前より,延長できるようになりました。
日本では,2008年に初めてソラフェニブが承認され,その後,スニチニブ,エベロリムス,テムシロリムス,アキシチニブと続々と分子標的薬が登場し使用されています。
ただし,これらの5種類すべての抗がん剤の適応条件は「根治切除不能または転移性の腎臓がん」です。
また,これらの抗がん剤は,他のがんと異なり,手術後の再発予防としては使用されていません。
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ソラフェニブ(ネクサバール)の治療
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ソラフェニブは,がん細胞の増殖に関わるシグナル経路を阻害し,増殖を抑制すると共に,血管新生に働くVEGF受容体,PDGF受容体を阻害し,がん細胞の血管新生を抑制するという二つの作用があります。
ソラフェニブは経口投与で,1日1回4カプセルを1日2回,計4錠を毎日服用します。
副作用として,よくみられ特徴的なものが,手の平や足の裏に皮疹や紅斑があらわれ,痛みをともなうこともある手足症候群です。
これは皮膚がピリピリするという知覚異常から始まることが多く,異常を感じたら医師に伝えましょう。
その他の副作用としては,下痢,脱毛,肝機能障害がみられます。
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スニチニブ(スーテント)の治療
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スニチニブ血管新生に関わるVEGF(血管内皮細胞増殖因子)受容体と,腫瘍増殖に関わるPDGF(血小板由来増殖因子)受容体など,複数の受容体を標的とし,これらのはたらきを阻害します。
スニチニブは経口剤で,1日1回4カプセル(50mg)を服用します。
副作用としては,ソラフェニブと比較して,血小板や血球の数が減少する血液毒性や甲状腺
機能低下などがみられます。
また,ソラフェニブよりは強くはないものの,手足症候群などなどの皮膚症状も見られます。
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エベロリムス(アフィニトール)の治療
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細胞には,mTOR(エムトール)という分子があり,細胞の分裂や増殖を促す信号を調節していますが,がん細胞では,このmTORが異常を起こし,増殖信号が常に送られている状態になります。
エベロリムスは,がん細胞の中にあるmTORの働きを阻害し,細胞の増殖にかかわる信号を遮断し,がん細胞の増殖や血管新生を抑制する作用があります。
この薬剤は,スニチニブやソラフェニブの抗がん剤をすでに使用した患者への有効性が確認されています。
エベロリムスはは経口投与で,1日1回,毎日同じ時間の空腹時に服用します。
主な副作用として,口内炎,高血糖,高脂血症などがあらわれる他,間質性肺炎,感染症などもみられます。
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テムシロリムス(トーリセル)の治療
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テムシロリムスはテムシロリムスと同様に,細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼmTOR(エムトール)を阻害することで,がん細胞の増殖を抑制すると共に血管新生を阻害します。
テムシロリムスは点滴で,25mgを1週間に1回,30〜60分かけて静注します。
副作用としては,発疹,口内炎,高コレステロール血症,高脂血症,食欲不振,高血糖などです。
貧血や悪心などが見られることもあり,重篤な副作用としては,間質性肺炎やインフュージョン・リアクションがあります。
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アキシチニブ(インライタ)の治療
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アキシチニブは,血管の増殖に関わるVEGF(血管内皮増殖因子受容体)を阻害することで,あらたにできる血管の新生を抑制する作用があります。
アキシニブはVEGFの中でも,VEGF-1,VEGF-2,VEGF-3に対して強い阻害作用があります。
経口投与で1回5mgを1日2回服用します。用量は1回10mg,1日2回まで増量が可能とされています。
副作用としては,下痢,高血圧,疲労感が頻度が高い副作用です。その他の作用としては,出血,血栓症,塞栓症,消化管穿孔,甲状腺機能障害,肝機能障害などがあります。
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